SHPデザインスタジオ 代表
一級建築士
経歴
1959年9月 愛媛県生まれ
1978年3月 愛媛県立松山工業高等学校 卒業
1992年6月 有限会社矢野真一郎建築設計事務所 入社
1995年6月 株式会社プランニングアクス 入社
1996年10月 SHPデザインスタジオ 設立
受賞歴
2004年3月 今治市まちなみ景観賞受賞
2005年3月 今治市まちなみ景観賞受賞
2006年3月 今治市まちなみ景観賞受賞
設計デザインのアイデアは、どのように湧いてくるのですか?
ファーストプランの場合は事務所ではなく、帰宅後、夜に自宅でアイディアを練る事にしています。
場所を変える事によって発想も変わるので、「仕事」という枠だけで無く、自分の日常生活の中でアイディアを生み出し、プランニングを進めるようなスタイルが多いです。
なるほど。
ご自身の生活体験の中から、インスピレーションを得るのですね。
ただそれはあくまでファーストプランで、実際にはお客さまとのヒアリングを重ねる事でプランにしていきます。
お客さまの生活スタイルや特性、さらに個人の趣味や理想とする家族の過ごし方などを読み取り、そこで家族が楽しく生活しているシーンを私なりに頭の中でイメージしていきます。
そこから生まれたプランをプレゼンし、 更にそれを基に幾度も打ち合わせを重ねる・・・こういった時間をより大切に、慎重に進める事がアイディアへと続き、お客さまの胸の内にある建築の形へと導いてくれると思っています。
↑お客さまのご意見、ご要望を第一に考え、ヒアリングを重ねることで理想を形にしていく、という辻田先生。
それは素晴らしいですね。
私たちは、自分の理想を押し付けるのではなく、あくまでもお客さまの求めるものを実現する立場ですから。
もう一つ大事になってくるのが建築する場所のポテンシャルです。
敷地へ赴くことは当然ですが、その敷地内のどの位置、高さ、方角にどのような景色が見えるのか、周囲の状況を確認して、イメージを浮かばせています。
特に自分は花火が好きなので、家に居ながらその地方の花火大会の花火が見える場を作ることが多いかもしれません(笑)
花火!そんなことまでリサーチされるのですね。
ご自宅から花火が見えたら、それはお客さまも喜ばれるでしょう。
↑花火好きというご自身の嗜好から、敷地内から見える花火大会の方向を計算し、プランに取り入れることもあるという。
建築デザイナーが建てる家には、どういった面白さがあると思いますか?
まずはお客さまの期待を超えるような提案ができるところでしょうね。
その場所に建てるからこそ導かれる建築の形があると思います。当たり前ですが、南側に2階建ての家があったり、隣地にマンションが建っていたり、周囲の環境に制限があったとしても、プライバシーを確保しながら、心地よい空間を造るようにします。
特に私は、「光」と「風」といった自然を生活空間のなかに取り入れることを重要視しています。限られた敷地状況であっても、自然を多く取り入れることで少しでも豊かな生活が生まれると思います。外観や形だけのデザインではなく、お客さまの暮らしをデザインしていく事も面白さの一つだと思います。
通り一遍等のデザインではなく、お客さま一人ひとりや敷地の個性に合わせたオンリーワンの提案ができるところが、建築デザイナーがつくる家の面白さ、というわけですね。
またお客さまから最初に聞かれる事の多い、建築構造に関する自由さも建築デザイナーならではだと思います。
木造だけでなく、コンクリートや鉄骨を主構造とした建築にしたり、それらを使って表現したり、色々な工法で造り上げることができる面白さもあると思います。
様々な工法に精通している建築デザイナーだからこそ、ですね!
実際に現場が始まると、お客さま、響建設の三者で定期的に打合せをして、素材や仕上げ、色だけでなくコンセントやスイッチといった細かい部分でも、生活のしやすさをとことん検証し確認していきます。
またソファーやダイニングテーブル、椅子などを仕上がった空間に合わせたものをアドバイスさせて頂き、建築本体だけでなく、生活のデザインまで携わっていけることも建築デザイナーならではの面白さだと思います。
なるほど。
私たち響建設も工務を行なう立場から、専門知識を活かした提案をさせて頂いてます。建築デザイナーと私たちでタッグを組んで、お客さまの理想を読み取り形にしていく作業が、醍醐味だと思っています。
↑ご自分のデスクにて。細かい箇所のチェック、デザインのすり合わせが、より良いものを生み出していく。
建築はその場所によって全く異なるものになります。だからこそ、様々な場所で色々な建築をつくっていきたいと思っています。
私は車での移動が多いのですが、その移動中に素晴らしいロケーションのところがあったりすると、「この場所でこんな建築を建てたいな~」とか、街の中心部で空き地があると「ここにはこんな建築を建てたら面白いのでは?」と想像しています。色々な場所に赴き、常に頭の中で建築を創造することで実際の建築設計にも結び付くと思います。
そういった場所に合わせて新しい建築をつくることをこれからも挑戦していきたいと思っています。
常にいろいろな場所で、イメージトレーニングされているのですね。
また住宅の場合、お客さまは一人ひとり考え方も暮らしも全く違っています。長年この仕事に携わっていますが、常に新鮮な気持ちでプロジェクトに挑戦し、取り組む事ができるよう一つひとつに向き合っています。
新しいお客さまと出会う度、毎回ワクワクしながら完成を楽しみにしています。単純な事ですが、これからもそういった新鮮さを忘れず新しい出会いに真摯に向き合って、挑戦することを心がけていきたいです。
辻田先生のお話からは、それぞれの場所、お客さまの暮らし方に合ったデザインを心がけようというポリシーが伺えました。
自分のアイデアを見せびらかすような建築デザイナーも見受けられるなか、辻田先生はお客さまを常に第一に考えられていて、とても誠実で素晴らしいスタンスだと思います。
今日は素敵なお話を、ありがとうございました。