「木でマンションは大丈夫?」 完成後に分かった“CLT集合住宅の本当の性能”

木造で集合住宅って、本当に大丈夫なの?

この質問、何度もいただいてきました。
そして今回、南国市で完成したCLT集合住宅「Gran X nangoku(グランクロス南国)」で、
はっきり答えられるようになりました。

“木だから不安”ではなく、“木だから合理的”

2026年4月25日に実施した完成研修会では、
完成すると見えなくなる“建物の中身”をすべて公開しました。

・CLTパネル構造
・断熱・気密性能
・温熱環境(実測データ)
・コスト・工期

この記事では、その内容を数字ベースで分かりやすく解説します。

この記事を3秒でまとめると

CLTは“面で支える構造”で集合住宅にも対応可能
RCと比較して温熱環境が安定しやすい(実測データあり)
光熱費・工期・コストまで含めて合理性が高い

目次

CLT集合住宅とは

CLTパネル構造の仕組み

CLTは、木の板を繊維方向が交差するように重ねた厚いパネルです。

従来の木造(柱・梁)に対して、
CLTは壁・床そのものが構造体=面構造

これにより、

・建物全体で力を受ける
・変形しにくい
・中大規模建築が可能

という特徴を持ちます。

CLT集合住宅の性能

ここからは、研修会で実際に説明した内容です。

断熱性能(UA値)

断熱性能は、外気と室内の熱移動を遮断する機能であり、
快適性と省エネ性能を左右する指標で、「UA値」で評価されます。
この数値が小さいほど高い断熱性能を表します。

グランクロス南国は、UA値:0.46となり、

・ZEH-M(UA値:0.6 断熱等級5)
・GX志向型(UA値:0.46 断熱等級6)

GX志向型基準をクリアする高断熱仕様になります。

さらにCLT自体も、
厚さ90mmでコンクリート1200mm相当の断熱性能を持っています。

つまり、構造体そのものが断熱材の役割を持つのがCLTの大きな強みです。

気密性能(C値)

気密性能は「C値」で評価され、住宅の快適性を左右する重要指標です。
(参考)C値:1.5 ⇒ 床面積100㎡に対してはがき1枚分(150㎠)の隙間

・高気密住宅:1.0以下
・一般建物:2.0〜5.0

グランクロス南国のC値は、
・1LDK:2.1
・3LDK:1.7
・4LDK:1.3
となり、一般的な建物と同等もしくはそれ以上の気密性能を持っています。

CLTは、
・面構造
・接合部が明確

つまり、高気密を確保しやすい構造

これは、
冷暖房効率の向上
温度ムラの抑制
光熱費削減
に直結します。

温熱環境(実測データ)

実際に住んでいる建物のリビングと脱衣所でそれぞれ比較しています。
リビングは空調設備のある生活空間、脱衣所は空調設備の無い空間として計測しています。

■ 夏(6〜9月)

スクロールできます
最大値(℃)最小値(℃)平均値(℃)1時間
平均変動幅(℃)
急変回数
(±1℃以上/1時間)
快適範囲滞在率(%)
(26℃~28℃)
RC(鴨部)34.924.228.70.5936944.5
CLT(朝倉)30.424.027.30.15478.0
CLT(いの)30.223.126.70.202664.2
リビング
最大値(℃)最小値(℃)平均値(℃)1時間
平均変動幅(℃)
RC(鴨部)29.723.026.80.18
CLT(朝倉)26.821.724.30.13
CLT(いの)36.922.926.50.33
脱衣所

・CLTは温度変動が小さい
・快適時間が長い
室温が安定

■ 冬(12〜2月)

最大値(℃)最小値(℃)平均値(℃)1時間
平均変動幅(℃)
急変回数
(±1℃以上/1時間)
快適範囲滞在率(%)
(18℃~22℃)
RC(鴨部)34.924.228.70.5936944.5
CLT(朝倉)30.424.027.30.15478.0
CLT(いの)30.223.126.70.202664.2
リビング
最大値(℃)最小値(℃)平均値(℃)1時間
平均変動幅(℃)
RC(鴨部)21.411.216.40.24
CLT(朝倉)23.013.219.50.09
CLT(いの)23.011.017.10.24
脱衣所

・CLTは変動幅が小さい
・脱衣所との温度差が小さい
ヒートショックリスク低減

■ 湿度(6月・1月)

最大値(%)最小値(%)平均値(%)変動幅(%)快適範囲滞在率(%)
(40~60%)
RC(鴨部)75.636.555.639.167.8
CLT(朝倉)83.024.066.059.021.8
CLT(いの)84.032.064.452.026.8
最大値(%)最小値(%)平均値(%)変動幅(%)快適範囲滞在率(%)
(40~60%)
RC(鴨部)52.817.028.135.82.7
CLT(朝倉)65.011.030.354.07.5
CLT(いの)65.012.036.353.024.3

・夏:RCがやや安定
・冬:CLTが湿度保持時間が長い
CLTは乾燥しにくい

数字で見る“コストの違い”

ここも重要なポイントです。
CLTは単純な建築費だけでなく、トータルコストで見るべき構造です。

光熱費(シミュレーション)

・一般的な木造住宅:電気+ガス代
・グランクロス南国:オール電化、おひさまエコキュート、太陽光発電

■ 4LDK
・一般的な木造住宅:25,027円/月
・グランクロス南国:8,919円/月
⇒▲約16,000円/月

■ 3LDK
・一般的な木造住宅:21,703円/月
・グランクロス南国:8,050円/月
⇒▲約13,000円/月

■ 1LDK
・一般的な木造住宅:11,791円/月
・グランクロス南国:7,049円/月
約4,700円/月

住んでからのコスト”まで含めて設計しているのが特徴

軽量構造によるコストメリット

CLTはRCの約1/5の重量
⇒地盤改良・基礎工事のコスト削減
 ※4階建てCLT集合住宅では、地盤改良工事のコストをRCの約1/3まで削減実績有り

工期短縮

・建方:約28日
・1フロア:約7日
⇒RCだと1フロア約3~4週間掛かるため、約1/3の工期短縮

維持・税務面

・償却年数:22年(木造)
・固定資産税:RCより有利
・解体費:低減
⇒オーナー側のメリットが大きい

木造でも安心な理由

耐火性能

CLTは火災時、
・表面が炭化
・燃焼速度:約1mm/分
⇒急激に崩壊しない構造

耐震性能

実大振動台実験では、阪神淡路大震災の観測波よりも大きな力を加えても倒壊しない、
高い耐震性を確認

CLTの性能詳細はこちらから

CLTとは|一般社団法人 日本CLT協会|

設計のポイント(今回の特徴)

今回の南国集合住宅は、メゾネット型住戸を採用

これにより、

・上下階が同一住戸
・遮音制約が緩和
・CLT天井あらわしが可能

木の質感をそのまま活かした空間を実現し、CLTの価値を最大化

CLT建築のこれから

CLTは単なる木造ではなく、

・環境性能(CO2削減)
・地域材活用
・林業活性化

にもつながる建築です。

CLT建築は、性能+社会価値を持つ建築

まとめ

今回の研修会でお伝えしたポイントはシンプルです。

CLT集合住宅は、

・構造
・断熱
・気密
・コスト
・環境

すべてを“合理的に成立させる建築”

そして今回のグランクロス南国は、
その“実証モデル”と言える建物です。

響建設では、

・データ公開
・施工ノウハウ共有

を通じて、CLT建築の普及を本気で進めています。

木造で集合住宅って、本当に大丈夫なの?

その答えは、
“現場を見れば分かる”

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